ようこそ医療ジャーナリスト・医学博士、森田豊の公式ブログへ。

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1963年東京都生まれ。88年秋田大学医学部卒業。95年東京大学大学院医学系研究科卒業。96年東京大学医学部附属病院助手を務め、97年ハーバード大学医学部専任講師。2000年埼玉県立がんセンター医長。04年板橋中央総合病院部長。現在は、現役医師、医療ジャーナリストとして、テレビ、雑誌等のメディアで活動中。さまざまな病気の概説や、医療に関する種々の問題に取り組む。

2016年11月5日土曜日

フジテレビ、「その原因、Xにあり!」を見て

長年にわたり数々の医療番組の出演、監修をしてきた私ですが、先週から始まったフジテレビ、「その原因、Xにあり!」を二回見て、医療番組の在り方についていろいろと考えさせられた。

 ●ポッコリお腹の原因→むくみ腸にあり→しょうがココアを3週間飲み続け、それ以外の生活は普段通りで、三人中三人でポッコリお腹が改善。

疑問意見:ポッコリお腹というと、主たる原因は内臓脂肪や皮下脂肪の蓄積による肥満と思う人が多い。どちらにしても各種ダイエットによる既存の方法で治すのが先決だと考えます。しかし、今回の放送のように、むくみ腸も、ポッコリお腹の原因の一つとなりうるなら、肥満によるポッコリお腹とどうやって区別するのか(大腸内視鏡?)を明らかにしてほしかった。ポッコリお腹の方々の何パーセントぐらいに、むくみ腸が存在しているのでしょうか?。むくみ腸と診断してから、しょうがココアを始めるべきなんでしょうが、番組の流れから、ポッコリお腹の人がみんな、しょうがココアで治るようなそんな誤解を招くようにも思えました。

●肩こりの原因→浮き指→タオルをつかった足指引き寄せエクササイズを三週間行い、それ以外の生活は普段通りで、四人中四人で肩こり改善?。

疑問意見:姿勢を正すという点で、浮指に注目したことは意義深いと思う。しかし、浮指だけが肩こりの原因ではないはずだから、浮指だけを治して、どれだけ大勢の方の肩こりが解消されるのかが疑問だった。

●冷え性不眠の原因→お尻→お尻ボールほぐしと足指ストレッチを7日間行い、それ以外の生活は普段通りで、三人中三人の冷え性不眠が改善。

疑問意見:お尻の冷えに特化することはないように思った。寝る前には、手足、内臓を含めた全身を温め冷えを改善し、その後に脳の温度を下げることが、眠りにつく重要なポイントではないだろうか。なんで梨状筋だけに注目したのか、通常のストレッチよりも優れている理由や、通常のストレッチよりも優れているという差を示す検証結果を見せてもらいたかった。

●下半身太りの原因→子宮の冷え→座っていると子宮動脈が圧迫→子宮冷え取りエクササイズを三週間行い、それ以外は普段通りの生活→四人中三人が子宮の血流改善、下半身太りも改善傾向。

疑問意見:子宮動脈は、総腸骨動脈から内腸骨動脈に分岐した骨盤の奥底にある細い血管。姿勢などで血流量が容易に変わるとしたら、妊娠中などの姿勢と胎児の発育などにも影響がでるはずだと思う。そもそも子宮の血流改善でどうして脂肪が燃焼するのか疑問に思った。
子宮とは関係なくエクササイズ自体の脂肪燃焼効果なのではないかとも感じた。

ほぼ100%の改善率を示す番組の検証結果を見て、多くの視聴者が、独特で簡単な解決法に飛びつき、それを信じ、毎日実践すると思う。
しかし、長期的な効果や、症例数の少なさによる医学的根拠の乏しさのために、画期的な効果を望めない可能性も高いように思えてしまう。
時代にかかわらず、医療番組は、症状で悩む多くの人のお悩みを高い確率で改善に導く役目と責務があるように思います。

医療番組のブームが去り、淘汰されつつある中、奇抜なインパクトのある構成に固守することなく、人のためになることに主眼を置いた、楽しい番組作りという基本を見失わないことが大切だと感じます。難しい課題ですが、自分も肝に銘じようと思います。