最近、種々の雑誌社から、ヤブ医者と良医の見分け方についての取材依頼がきます。自分自身がヤブかどうかの評価は別として、こんなことがいえるのではないでしょうか。すなわち、「愛想がよく、患者にいいことばかりしかいわない医師のなかには、ヤブ医者が潜んでいる可能性がある」ということです。 患者が医療機関を出てきたときに、「とてもいい先生だった」「とても安心した」と思った場合、注意が必要なことが多いです。本来は適度な励ましの言葉がありながらも、「こんな生活をしていたらダメだよ! 」 「この治療を受けた場合には、体にこんなデメリットを生じる可能性がある」と、患者を正しく怖がらせる医師が良医の条件ではないでしょうか。
もっとわかりやすくたとえるなら、高級クラブに行って、お酒をたくさんすすめられ、たいへん幸せな気持ちで店を出る場合と、「お客さん飲みすぎだよ! タバコもそんなに吸ったら体に悪いし」と、おばちゃんに笑顔で怒られながら場末の居酒屋をあとにするときと、 どっちが、「自分のことを考えてくれるのか」という違いです。人の命を預かる医師の仕事は、決して感謝や報酬を求める仕事ではありません。一隅を照らす仕事、基本的には地味で、しかも大変なのですが、最もやりがいがある仕事です。決して接待業であったり、人を楽しませたりするものではなく、ときに厳しく、きにつらいことを患者さんにいわなければなりません。
そんな自分の実体験から、強い動機を持って、著書を出版しました。