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1963年東京都生まれ。88年秋田大学医学部卒業。95年東京大学大学院医学系研究科卒業。96年東京大学医学部附属病院助手を務め、97年ハーバード大学医学部専任講師。2000年埼玉県立がんセンター医長。04年板橋中央総合病院部長。現在は、現役医師、医療ジャーナリストとして、テレビ、雑誌等のメディアで活動中。さまざまな病気の概説や、医療に関する種々の問題に取り組む。

2009年5月18日月曜日

新型インフルエンザ、国こそ冷静に

新型インフルエンザ大騒動。
国、厚生労働省、地方自治体は、大きな間違いをしてませんか?
結論からすると、これは、最初から、通常の季節性インフルエンザと同様に扱えばよかったということになりますね。
日本の大騒動に対して、同じように考えている国内外医師や、厚生省検疫官現役医師、WHO職員、欧米専門家も多かったようです。

致死率も、従来の季節性インフルエンザと、それほど変わるものではありません(これまでの報告では、通常の季節性インフルエンザで、0.1%、新型で0.4%ですが、この値は、メキシコでの死亡の数が多いので、それを考慮すると、新型はそれほど高い死亡率ではありません)。また、治療薬もある日本がどうして、患者の出ていない学校や様々な集会まで閉鎖にしなければならないのか、患者でない人を隔離しなければならないのか、WHOや欧米の専門家達も、まったくエビデンスのないこと、としています。人権侵害にも発展しかねないという人もいます。それだったら、従来の季節性インフルエンザの患者さんにも同じような対応をすべきではとも考えてしまいます。

現在は、地方自治体の発熱外来で対応していますが、今後は絶対にキャパシティがなくなりますし、現在の病院事情からすれば、患者隔離など不可能になります。すぐに、通常のインフルエンザと同様に、病院および自宅対応にしてよいと思いますがね。すなわち、新型患者が出ても、タミフル、リレンザを出して、自宅で安静。重傷者のみ入院にする。すでに、さきほどから、神戸ではそのような対応になったようで、それは懸命だと思いますが、まだまだ各地はパニックしています。

国のリーダーが、最初から、きちんと説明すべきだったのです。政治家ではなく、できれば専門家にゆだねて、過剰でない、適切な初期対応。とくに、国民のパニックやメディアのパニックを生じさせないような気配りが第一だったように思えてなりません。国は、国民に冷静にと言っていながら、結局、派手な水際対策、発熱外来と騒ぎを拡大させ、一番冷静ではなかったようです。

厚生労働大臣の会見では、水際対策でなんとしても全力をあげて国内侵入を防ぐと言っていましたが、これは政治家の発言で、大変がんばっているとは思いましたが、医学的には不可能なことは、最初から明瞭でした。症状がでる前の時期、すなわち、ウィルスを持って潜伏期に入国した人が山ほどいるからです。機内検閲や、サーモグラフィーは、症状もなく潜伏期で入国した人々のことを考えれば、意味がないことと考えられます。一台、300万円もするサーモグラフィーを数百台もの費用は、もったいない気もしてなりません。100人以上もの感染者がでて、その中で、水際での検出は4人です。防御服を着て、細菌テロに立ち向かうような機内検閲は、どの他の国から滑稽ともとられたようですし(BBC放送も報じていました)、その効果はなかったわけです。最初から、機内検閲はWHOは意味がないといっていました。

新型インフルエンザは、最初から特別あつかいするものではなく、通常のインフルエンザと同様にあつかうべきだったのだと思います。

株価や、経済界、教育界、その他に影響がでるまでの、大騒ぎとなった責任は、国の初期対応と過剰な反応、冷静さを失った国の対応にあったと思います。