ようこそ医療ジャーナリスト・医学博士、森田豊の公式ブログへ。

森田豊医師の公式HP(http://morita.pro/)はこちらからご覧ください。
1963年東京都生まれ。88年秋田大学医学部卒業。95年東京大学大学院医学系研究科卒業。96年東京大学医学部附属病院助手を務め、97年ハーバード大学医学部専任講師。2000年埼玉県立がんセンター医長。04年板橋中央総合病院部長。現在は、現役医師、医療ジャーナリストとして、テレビ、雑誌等のメディアで活動中。さまざまな病気の概説や、医療に関する種々の問題に取り組む。

2010年4月22日木曜日

文化放送「玉川美沙のたまなび」に出演


4月21日、文化放送「玉川美沙 たまなび」の中の、「たまなび学園」に出演してきました。http://www.joqr.net/blog/tama/archives/cat721/index.html
医学博士の達人としてのお招きで、3月に出版した著書「ねぎを首に巻くと風邪が治るか」にからめて、新しい医学常識の盛りだくさん紹介させてもらいました。約20分間の、玉川美沙さんとのトークでしたが、当初、台本も用意はされていたのに、玉川さんは台本はまったく見ず、どんどん楽しい話が展開していきました。とても楽しい20分間を過ごすことができました。台本のない、その場その場の話のキャッチボールは、生き生きとした会話になりますね。ときどき変化球が飛んできましたが。。。

2010年4月7日水曜日

ニッポン放送「上柳昌彦のお早うGood Day!」に出演

4月7日、ニッポン放送「上柳昌彦のお早うGood Day!」にお招きいただき出演してきました。「ザ、特集」の二回目の出演でしたが、出演の冒頭で、木村拓也コーチのクモ膜下出血のニュースが突然、入ってきて、内容が急遽変更され、病気の概説をしばらくしました。その後は、メインテーマである、新しい医学の常識について紹介しました。上柳さんのアップテンポな会話で、約20分にわたり愉快にかたることができました。有意義な時でした。
http://www.1242.com/goodday/index.php?id=2&YMD=2010-04-07

2010年3月31日水曜日

2010年4月の診療報酬改正!治療費負担はどう変わる?


以下の内容は、bayfm 『POWER BAY MORNING』、デリナビ(2010年3月31日)にて出演、お話した内容です。
2010年4月1日から、病院や診療所で治療を受けたときの医療の費用が変わります。患者が負担する医療費などの基準となる診療報酬が全体で0.19%、引き上げられます。10年ぶりとなるこの引き上げですが、入院や通院をした際、どのくらい影響をうけるのでしょうか?
●今回の改定の具体的な内容は?
内容を見てみると、救急・産科・小児科・外科など、リスクが高く、医師不足といわれている科の再建をめざす、すなわち、医療崩壊を防ぐためのプラス改定ということなんですが、もっとも大幅な変化は、手術の費用でしょう。すべての手術ではないのですが、手術のうちリスクの高いもの、人手を要するもの(全体の手術の約半数)については、3割~5割も医療費が増額されます。たとえば、帝王切開の費用は150000円→19340円、大腸がんなどの直腸切除270000円→405000円、脳動脈瘤クリッピング72000円→103710円と、増額されます(患者負担は、この3割です)。ただし、患者さんにとって、手術というのは何度も受けるものではないので、高くなったという印象を受ける人は少ないかもしれません。
●基本的には上がるものばかりなんでしょうか?
そうとも言えません。たとえば、再診料は、診療所では下がります。病院と診療所で690円と、統一の費用になります。これまで診療所は710円、病院は600円でした(実際に支払うのはこのうち3割)。初診料は、これまでどおり、病院も診療所も2700円のままです。また、注目される点は、医師に処方してもらう薬の価格は、平均で5.75%下がることです。全部の薬ではないのですが、かなり多くの薬の価格が下がるので、いままで継続的に処方されていた薬が、若干、安価になったと感じる人もいるかと思います。また、一部の検査費用も下がります。
●その他に4月から病院にかかった時に変わることには、どのようなことがありますか?
原則として、パソコンを導入している病院では、領収書に治療明細が記載されます。すなわち、詳しい検査の内容、薬の正式名称、診療報酬の点数が明記されます。これは、医療情報の透明化をはかり、医療側の不正請求を防ぐためです。患者さんにとっては、どんな検査をされたのか一目瞭然で、不必要な検査が少なくなるのではとも言われています。デメリットとしては、家族の意向で、がんなどの病名告知をしていない患者さんに対しては、この明細書により病名が明らかになってしまうことが危惧されます。
●今回の改正の問題点は?
改正の大きな目標は、リスクが高く、医師不足といわれている診療科の再建、医師不足の解消なんですが、手術費用を増加させても総合病院、大学病院で勤務する勤務医にとっては、医師個人所得の増加につながらず、そういう診療科の医療崩壊を食い止める有効手段とは言い難いのが現状です。つらくて厳しい診療科、個人給与の増額を望めない診療科には、現状では希望者が入ってこないのです。そこで、医師の間では、手術に従事した医師に対してドクターフィーなるものを収入の一部として支払ってはという意見も出ています。これには、過半数の医師が賛成しています。
●今後、どのような取り組みが必要となってくるのでしょうか?    
医療崩壊の防止、また、救急・産科・小児科・外科など、リスクが高く、医師不足といわれている科の再建には、診療報酬というお金で解決しようとするだけではなく、診療科ごとの医師数の偏在化、そして、地域ごとの医師数の偏在化を是正するようなシステム、制度作りを、国をあげて行うことが肝要だと思います。医学部入学時あるいは卒業時に、外科系、内科系医師の定員を決めるとか、それぞれの出身大学の地域に一定期間、残って勤務するなどのシステム構築が今、医療に求められていることだと思います。医師数を1,5倍にするという民主党のマニフェストもある意味理解はできますが、いま、最も重要で、即時の打開策になりうるのは、この『偏在化の是正』だと思います。

2010年3月3日水曜日

最新医学常識に関する新書発売


2010年3月10日、角川SSC新書、『ねぎを首に巻くと風邪が治るか?知らないと損をする最新医学常識、森田豊著』が、発売されます。
最新医学常識を可能な限りたくさん盛り込んだ著書です。テレビ番組や雑誌等で、取り組んできた内容をも参考に、まとめたものです。すり傷をしたら消毒薬で消毒してガーゼをあてる、突き指をしたらまず指を引っ張る、鼻血が出たらティッシュを鼻の穴に詰める、プールで泳いだ後は水で目をよく洗う。いつもやっていることは、本当に適切な処置法なのでしょうか?。医学は、この数十年でめまぐるしい発展を遂げてきています。その間に、今まで当たり前のように考えられてきた医学の常識がまったく根拠のない迷信だったり、単なる思い込みだったりと、驚愕する事実がわかってきました。本書では、今まで信じられてきた医学常識を覆し、94項目のあやふやな医学常識を俎上に上げ、その可否を詳しく説明します。

2010年1月21日木曜日

新型インフルエンザワクチンが余る!!

フジテレビ、特ダネ!、の取材を受けた際に、検証した内容をブログにしました。
 厚生労働省が欧州の二つの製薬会社から輸入することを決めた新型インフルエンザ用のワクチンについて、医療機関の需要はほとんどない状態であることが47都道府県への聞き取り調査で分かったようです(東京新聞、1月20日朝刊)。輸入予定のワクチンは成人換算で9900万人分で、総額1126億円です。厚労省は20日付で都道府県から輸入ワクチンを希望する医療機関の数などの報告を受けますが、現時点での需要を「ゼロ」「発注見送り」としたのは、26都府県もあったようです。国産ワクチンも余剰気味の状況です。長妻昭厚生労働相は、19日の記者会見で、新型インフルエンザワクチンは今シーズン中に次の流行が起きるかもしれないことを勘案しても「現時点で余る公算が大きい」との認識を示して、「各国の対応を見ながら、メーカーとの(余剰分の解約)交渉ができるかも含め検討している」と明かしたようです。
●その背景を検証してみます。
(1)2009年10月より、医療従事者、妊婦、などの順で、優先接種が始まりました。当初2回投与が必要と言われていたものが、WHOからの情報により、厚労省も一転、二転して、結局、13歳以上は1回で効果があると判断したわけです。2回から1回になることで、かなりワクチン供給量に余裕ができました。
(2)新型インフルエンザが流行のピークを越え、優先接種対象者でも、有料でのワクチン接種を希望するが人が少なくなりました。
(3)新型インフルエンザの致死率や重症化率が従来の季節性インフルエンザよりはるかに低いこと(2009年12月8日のブログ参照、フジテレビFNNスピークでコメント)、また、仮にかかっても、タミフル、リレンザでほとんど治癒できるものだということが、多くの人に理解されるようになり、国民の不安が少なくなってきたことが、接種希望者の減少につながったのかもしれません。第二優先接種対象者である妊婦においても、我々が当初予想していたほど、ワクチン接種希望者は多くなく、接種率のデータは国内にはないのですが、例えばイタリアにおける妊婦の接種率は10%とも報告されたのは注目に値します。
●どうすべきだったのか?
 新型インフルエンザに関する情報、国民の危機感、不安感、そしてワクチンの希望者の数は、時間経過とともに、大きく変化しました。自民党政権時代に、一号患者、二号患者と報道されていた時は、なんとしてでも多くのワクチンを獲得すべきと判断したのでしょうし、国民の不安も絶頂に達していたように思います。しかし、徐々にその過剰な反応がうすれつつ、それほど怖い病気でないことの実態がわかってきた現在、ワクチン接種希望者が減少するのは理屈にあった現象なのかもしれません。西欧諸国でも、大幅な余りが生じ、フランスなどでは、「血税の浪費」「業界への利権誘導を図り政府が水増し発注したのではないか」などとも報道されているようです。当初の国内における新型インフルエンザに対する過剰な反応が、日本でもよりいっそうワクチンを余らせる要因になったのでしょう。そこで、もしも、反省する点があるとしたら、どこでしょうか?厚生労働省は、各都道府県を通じて、各医療機関ともっと密に連携して、それぞれの時点で、どのぐらいの需要があるのかを、経時的に、頻回に、詳細に、把握するように努めるべきだったように思います。これまでの、厚生労働省⇔都道府県⇔各医療機関への通達文章、提出書類をみていると、それぞれの優先接種対象者の順番が回ってきた際に(通常は約2週間前)、各医療機関におけるその優先対象者のみにおける希望の投与数を記載させて、それを考慮して分配するという単純な通達経路しか働いておらず、もっと長期のビジョンにたった需要量の把握に対する努力もできたのではないかとも思います。国内だけではなく、世界のワクチンの需要と供給の動向、また、当初言われていたほど危険な病気ではないのだという医学的データをも、冷静に判断すれば、余りが生じることも、もう少しだけでも早めに予見できたようにも感じます。
●最後に
おそらく、輸入ワクチンの成人換算で9900万人分、総額1126億円の大半が余ることになりそうです。メーカに余剰分の解約が可能であればそれに超したことはありませんが、かなり前から確保しているものだけにメーカ側も難色を示す可能性は大です。フランスのように、他の国に転売したり、あるいは発展途上国などに寄付することも考えていくのでしょう。

2010年1月15日金曜日

第三のインフルエンザ治療薬、ペラミビル

タミフル、リレンザに続く、インフルエンザの第三番目の治療薬であるペラミビル(塩野義製薬)の製造と販売の承認が、1月13日、厚生労働省よりおりました。新型インフルエンザが流行し治療薬の需要が高まる中、厚生労働省が審査を優先して極めて早いスピードで承認したことは注目に値します。ペラミビルの正式な承認は、日本が世界で初です。点滴注射の形で投与すること、一回投与(おおよそ15分)のみでタミフルやリレンザを5日間投与したものと同等の効果があること、発症後比較的時間が経っていても効果があること、副作用が少ないことなどが特徴です。人工呼吸器を装着している方や内服ができない人にも投与可能で、さらに、タミフル、リレンザのように発症後48時間以内ではなく、もう少し時間が経ってからも効果があるようですので、発熱してすぐに病院に殺到しなくともよいかもしれません。
詳細は、プレジデントファミリーに掲載されました。
http://www007.upp.so-net.ne.jp/morita/image_keisai/president_family.jpg/

2009年12月24日木曜日

10年ぶりの診療報酬引き上げには、どんな意味があるんでしょう?

以下は、12月24日放送、ニッポン放送、お早うGoodDayでお話した内容です。
政府は、2010年度診療報酬の改定率について、全体で0.19%の引き上げることを決めました。これまで10年は「マイナス改定」で、プラス改定は2000年度以来、10年ぶりです。この引き上げで、長妻厚生労働大臣は「医師不足を解消させたい」としていますが、果たして効果はあるのでしょうか?
以下に私の考えを列挙します。
●小泉政権以来、医療費はずっと抑えられてきました。これがやっと増加に転じたことには、歴史的政治的には意義はあります。しかしながら、診療報酬の引き上げは、医師不足や医療崩壊を防止するための改革には、ほとんどつながらないと考えます。
●国民の負担としては、診療報酬が0.19%増加という数値は、平均年収の方では、保険料が年間285円、外来窓口負担金が一ヶ月あたり7.8円の増加で、それほど大きな問題ではないかもしれません。しかしながら、失業率が高く景気がわるい我が国の国民の負担が少しなりとも増加するのに、もし、あまり大きな効果が望めないとしたら、残念なことです。
●民主党としては、政権交代をして、これまで自民党による医療費削減ということから脱却する、または、政治主導にしたいという、民主党の「何かしたい」というアピールだったようにもとれます。
●特に、長妻厚生労働大臣は「10年ぶりの引き上げによって、医師不足が深刻で非常に厳しい状況に陥っている救急医療や産科、小児科などの体制を充実させるきっかけになると思う」と述べました。しかし、私は、救急医療や産科小児科の体制充実にはつながらないと思います。開業されている医師に対しては、少しの増収はあるかもしれませんが、勤務医にはおいては、診療報酬が増加しても、給与が変わるわけではありません。増えた報酬は、病院経営維持のために回されるのが慣例ですね。救急医療や産科、小児科から医師がいなくなるのは、激務に加えて訴訟のリスクが高いためで、仮に給与をもっと大幅増加させても効果はあまり期待できないと考えます。
●現在の医療が抱えている最大の問題は、第一に、「診療科別の医師数の偏在」。たとえば、救急医療、産科、小児科の医師が慢性的に不足しつつあることです。いわゆる、重労働で訴訟のリスクの高い診療科医師のなり手が少なくなっていることです。第二に、「地域別医師の偏在」。地方では、医師不足のため、近くに通う病院がないという状況まで生じています。
●これらを改善するには、「診療報酬や医療費アップ」では効果は望めません。第一の「診療科別の医師数の偏在」には、診療科別の医師の定員化等を検討すべきです。このようなシステムを構築できるのは、厚生労働省だけです。第二の、「地域別医師の偏在」には、たとえば国公立大医学部出身者に、その地域にある期間、残ってもらうようなシステムを作ることも一つの案ですね。
●診療報酬のような「お金」で、医療崩壊を解決しようとするのではなく、もっと現状を把握した上で、「知恵や英知」で、システム作りをすることの方が重要に思えてなりません。

2009年12月8日火曜日

新型インフルエンザの国別死亡率では日本が最も低い

12月8日、フジテレビ、FNNスピークで一部コメントした内容です。
日本では、新型インフルエンザの重症化率や死亡率が低いことや、その理由を記載しました。国内では、季節性インフルエンザにおける死亡率にくらべて、新型インフルエンザでは、10分の1から、50分の1の死亡率と言えます。
また、日本がタミフルなどを容易に使用できる環境にあることなどの特徴性もしめしてあります。
●11月6日のWHOの発表によれば、日本における新型インフルエンザ患者の重症化率(入院した率)は10万人に2.9人、死亡率は100万人に0.2人と、数十カ国の中で最も低い。最も死亡率が高いのは、アルゼンチンで100万人に14.6人でした。日本での死亡率はアメリカの30分の1、世界平均の数百分の1です。なんで日本では、重症化率や死亡率が最も低いのでしょう?。 
●これは、日本において、タミフル、リレンザといった抗インフルエンザ薬の供給が十分であり、医師が積極的に処方し、患者も服用できるといった背景に基因する結果と思います。
●たとえば、アメリカでは、米疾病対策センター(CDC)が 「健康な人は新型インフルエンザに感染しても、タミフルやリレンザなど 抗ウイルス薬による治療は原則として必要ない」とする方針を発表しています。供給に限りがあること、耐性ウイルスの出現の恐れなどを理由に挙げています。  逆に日本では、感染症学会が「インフルエンザかどうかわからない疑い例であっても、積極的にタミフルを投与すべき」という方針を発表しています。日本では、インフルエンザキットで陰性の結果がでても、医師の裁量でタミフル、リレンザを処方できるわけです。その結果、日本でのタミフルの同じ人口あたりの消費量は、米国の20倍以上とも言われています。
「熱発したらすぐ医者に行く」国民性の国(日本)と、「熱が出たくらいでは医者には行かない」という国民性の国(他国)では、後者の方が有意に致死率は高くなるのでしょう。
●厚生労働省の徹底的な水際対策から始まり、連日、繰り返された様々なメディアでの積極的な報道姿勢は、我が国では特徴的でした。世界の中でも、我が国は国民全員が、新型インフルエンザに対してとても過敏になったのです。熱発したらすぐ医者に行くという傾向を生み出したのかもしれません。そして、タミフル、リレンザが、他の国より多く処方され、新型インフルエンザの国別死亡率では日本が一番低いという結果になったのだと考えます。
●しかしながら、我々は、この結果を慎重に見なければなりません。まずは、これだけタミフル、リレンザを積極的に多量に使用している我が国は、将来的には、これらの薬の効かない耐性インフルエンザウィルスを生み出す確率も高くなることです。また、グローバルな観点からは、タミフル、リレンザが国際的に偏在なく供給され、必要欠くべからざる人にのみ投与されるのが、正論のようにも思えてなりません。

2009年11月15日日曜日

新型インフルエンザワクチン投与開始により現場は混乱?

 ワクチン1回投与、2回投与など、一転二転しましたが、国内でも新型インフルエンザワクチンの投与が開始されました。そんな中で重大な問題があがってきています。以下に列挙します。
●現場でもっとも問題になっているのが供給されたワクチンの形状です。 ワクチンの1回接種量は、新型も季節性も、成人(13歳以上)0.5 mlで、最も少ない量で0歳児が0.1 mlです。従来の季節性のワクチンは、1 ml容器で供給されていましたが、新型ワクチンは、10 mlと1 mlが混在して供給されました。そして、10 mlの容器の方が多く供給されているようです。生産効率を上げるためだったようです。計算上は20名~100名分のワクチンが1容器に同梱されていることになります。そして、10ml容器中の薬液は、24時間以内に使い切る必要があるのです。一つの容器を開けたら、20名~100名分の人をあつめて24時間以内に使い切らなければならないということは、余分で捨てなければならない無駄なワクチンが生じてしまうことになります。特に一人の投与量の少ない小児科では、一日の摂取患者数をかなり多くしないと、あまったワクチンを捨てなければならないことになります。まさしく小児科の現場は戦場ですね。
国会でも、この問題が取り上げられ、舛添前大臣の「10 mlを使ったら無駄に廃棄することになる」という質問に対し鳩山首相が「破棄されてはならないと思っている」と答弁されています。http://lohasmedical.jp/news/2009/11/06122858.php
11月12日、鳥取県の病院で、余った新型インフルエンザワクチンを職員親族に接種したことが各紙で報じられました。 (2009/11/11読売新聞、朝日新聞、日本海新聞)。 記事の読者は「皆が希望する新型ワクチンを、便宜を図って身内の職員親族に接種するとはなんとずるい病院だろう」と思った人も多いのではないでしょうか。しかし、仮に病院が薬液を破棄していたらどうでしょうか?。その場合「大切な新型ワクチンを破棄していた病院」と報道されていたかもしれません。11月14日になって「新型ワクチン、不便な大瓶 10ミリ、一度に使い切れず」と題す
る記事が朝日新聞に掲載されました。この問題にメスをいれた朝日新聞は大変すばらしいと感じます。ともわれ、この10mlの問題、国も何らかの方針を出すべきではないでしょうか?

●第一優先接種対象である医療従事者ですが、医療側からの必要量と、供給量に大きな差がありました。供給量が少ないので、投与されない医療従事者からの愚痴をよく耳にします。医療従事者の中でも、直接インフルエンザ患者に接する可能性の高い診療科や医療従事者ということに限定されました。しかしながら、この定義が、とても曖昧で、それぞれの病院が独自の考えで対象となる医療従事者を決めているのが現状です。
医師と看護師のみなのか、看護助手、事務も含めるのか、それもすべて各病院で決めることなのです。たとえば、40才以上は、最もインフルエンザに暴露される機会の多い小児科医師でも感染するリスクは低いから投与しないという大学病院もあったり、ほとんどインフルエンザ患者に接する機会のない診療科の医師にも投与していたり、ほとんど患者と接する可能性の少ないところで働いていた薬剤師らにも投与していたり、まったくまとまりのない状況です。病院の中では、なんで「彼らが投与されて、私が投与されないの?」といった意見も耳にします。中には、「私に投与した方が、お国のためになるのでは?」、といった危ない発言も耳にします。根元には、厚生労働省が、それぞれの診療科やインフルエンザに関わる医療従事者の数を把握していなかったことに問題があると思います。どこの病院にどれだけのインフルエンザワクチンを配給するかについても、今回は、病院の申請数を考慮して、それよりも少ない数を配給したわけです。製造期間中、配給する前にかなり時間があったのにも関わらず、どうして、もっとよく調査しなかったのでしょうか?そして、供給量不足ということはかなり前から分かっていたことですから、誰もが納得する一定の基準を、なぜつくらなかったのでしょうか?現場は混乱します。そして何よりも、医療従事者を介する感染拡大を防止するということが目的なのですが、この病院間の投与基準格差により、施設による感染拡大の予防効果に大きな隔たりが出てしまったようにも思います。

2009年9月9日水曜日

子宮頸がんの予防ワクチンに関して

今日は話題を変えて、子宮頸がんの予防ワクチンに関して、概説します。
この内容は、9月14日発売の、サンデー毎日(9月27日号)にも一部掲載されます。
( http://www007.upp.so-net.ne.jp/morita/html/keisai_06.htm )
●体の臓器には、様々ながんができますが、そのほとんどの発症理由は解明されていません。たとえば、タバコを吸う人に肺がんが多いことはわかっていても、吸ったことのない人にも肺がんは生じます。確率的にタバコを吸っている人に肺がんが多いというのは、いわゆる疫学調査であって、本質的ながんの原因究明がなされた訳ではありません。しかしながら、子宮頸がんに関しては、ここ20,30年の間に大きな医学の進歩があったように思います。子宮頸がんの原因が、性交渉を通じたヒトパピローマウィルス(HPV)の感染によっておこり、ワクチン投与により、70%もの方が、その感染を予防できるという事実です。すでに、オーストラリアのように、12、13歳を対象に、13~18歳までの学校終了までの期間に、全員が無料で受けられるようになっている国があることや、イギリス国内では、12歳女子へのワクチン接種率は、およそ90%に達していて、その背景には学校教育、テレビ、携帯サイト、ホームページなどでの広報活動の存在があったことも事実です。近くの国で言えば、韓国も投与が開始されています。主として欧米諸国、世界108カ国でワクチンが承認、使用されているのです。がんの発症を100%防ぐというわけではありませんが、70%(日本国内では、60%ぐらいになる見込み)の子宮頸がんの予防できる医学的見地から、きわめて有用なワクチンであり、画期的な医学の進歩といえるでしょう。
国内でも、遅い進行ではありますが、何とか近々、ワクチンの投与承認許可がもらえる見込みとなってきました。ともあれ、多くの人たちが、上記の情報を知ってもらいたいと願う次第です。国によっても若干異なりますが、投与時期のほとんどが、12、13歳というきわめて低い年齢であることは、おそらく多くの方々がびっくりするように思います。理由は、性行為を開始する前だと、高い効果が望めるからです。
●その上で、日本のお父さん、お母さんが、自分の中学生の娘さんにワクチンをうけさせるかどうかが問題となってきます。日本では、性の問題が、欧米諸国と比べて、タブー視されてきました。性教育のほとんどが、保健体育の授業(おもに女子生徒のみを対象)のみにゆだねられ、家庭内で話し合われることはきわめて少ないのが事実だと思います(特に父親が話をすることは皆無といってもいいでしょう)。これは、それぞれの国の歴史的な背景によるのかもしれません。そんな状況の中で、おそらく3万円から5万円(未定)もするワクチンですから、自分の娘さんに打つかどうかに関して、両親の判断、そして、両親から娘さんへの説明も必要になってくるわけです。すなわち、学校任せにしていた性教育を、家庭の場でも話し合わねばならない時期に来たともいえるでしょう。幼児のように、何のワクチンだか説明もしないで打ってしまうわけにはいきませんね。
●これまでの学校教育に任せていた性教育の在り方を、見直す時期なのかもしれません。
ワクチン承認された後、ワクチンの普及や接種は、産婦人科医が主に行うでしょう。しかし、12、13歳のお子さんが親と一緒に産婦人科に受診となると、かなり抵抗をしめすことが懸念されます。ワクチン普及には、行政(厚生労働省)、教師(学校)、両親、小児科医、メディア、製薬会社、インターネットなど、多くの分野、人たちの、性に対する適切な指導が必要となってきます。12,13歳の女子たちが混乱しないように。
●12、13歳の娘にワクチン接種を行うことが、性交に対して『お墨付き』につながるのでは、という反対意見もあり、たとえば、アメリカの一部でも反対運動がありました。
ただし、国内の現状の初交年齢や( http://homepage3.nifty.com/m-suga/young.html )
、若年者における性の知識の普及度を鑑みると、12、13歳の娘さんに、ワクチンの重要性を説明したからといって、必ずしも、性交を『よし』とすることにはならず、親子で、性について考えるよいきっかけにもなるのではないかと、私は思っています。すなわち、ワクチン接種の問題だけではなく、妊娠や避妊の問題、性行為感染症の問題など、良い方向に、性教育が広まっていく可能性も多々あると思います。なかなかこれまで、妊娠や避妊、性行為感染症といった問題を家で、娘さんと議論するきっかけがなかったように思いますが、子宮頸がんという病気からであれば、それを突破口として、避妊や性行為に関して話をする場をつくる契機にもなるように思います。
●この画期的なワクチンを、若い女性の性行動や性教育も含めて、円滑に普及させることは意義があります。公的助成や、厚労省のリーダーシップなども期待したいところですね。