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1963年東京都生まれ。88年秋田大学医学部卒業。95年東京大学大学院医学系研究科卒業。96年東京大学医学部附属病院助手を務め、97年ハーバード大学医学部専任講師。2000年埼玉県立がんセンター医長。04年板橋中央総合病院部長。現在は、現役医師、医療ジャーナリストとして、テレビ、雑誌等のメディアで活動中。さまざまな病気の概説や、医療に関する種々の問題に取り組む。

2012年1月24日火曜日

TPPでの混合診療全面解禁の是非(J-WAVE)

アメリカが、TPP環太平洋連携協定への参加交渉や事前協議で、保険適用の診療と適用外の自由診療を併用する「混合診療」の全面解禁を対象外とする方針を日本政府に非公式に伝えていたことが昨日分かりました。本朝のJ-WAVE、J-WAVE TOKYO MORNING RADIOでは、TPPでの混合診療全面解禁の是非について下記の一部を解説しました。
●公の医療保険が効く保険診療は、診療費のおおよそ3割だけを病院の窓口で払えばいいことになります。
●保険のきかない自由診療では、すべての費用は患者さんが窓口で払うことになります。
(たとえば、国内で認可されていない薬の投薬、新しい手術など)
●混合診療というのは、保険診療と、保険がきかない自由診療を、同じ日に受けることです。現在の日本の医療制度では、混合診療を行った場合、すべてが自由診療、すなわち、保険診療分も、すべて自分のお金で払わなければならないのが原則です。保険診療分を公的保険でまかなってくれないことを、混合診療の禁止と呼んでいます。
●もしも、混合診療が当初のアメリカの要求のように全面解禁されるとすると、混合診療を行った際に、保険診療分の約7割が、公の医療保険で支払われることになるので、混合診療をうける患者さんにとっては、一見、病院の窓口での支払いが少なくなるように思われます。しかし、ここに落とし穴があるということから、日本医師会などの団体は反対をしたのです。すなわち、混合診療を解禁すると、自由診療の方に、力を入れる病院が多くなるという風潮につながってしまい、これまで、国内で認可されていない薬や、保険適応でない手術などによる自由診療の割合が増えるのではないかと危惧したからです。結果的には、自由診療に拍車がかかって、従来の保険診療の適応される範囲も狭くなって、国民皆保険制度も壊れる可能性があります。自由診療が多くなってしまうと、お金をもっているひとだけがよい医療を受けられるという医療格差が生じてしまう可能性がありますし、日本のよい制度が、医療の競争で悪くなってしまうと考えられるのです。
●今回、アメリカが、混合診療の全面解禁を対象外とする方針に出したことは、賛否両論はあるとはいえ、日本の医療に悪い影響が生じないようものと考えます。