ようこそ医療ジャーナリスト・医学博士、森田豊の公式ブログへ。

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1963年東京都生まれ。88年秋田大学医学部卒業。95年東京大学大学院医学系研究科卒業。96年東京大学医学部附属病院助手を務め、97年ハーバード大学医学部専任講師。2000年埼玉県立がんセンター医長。04年板橋中央総合病院部長。現在は、現役医師、医療ジャーナリストとして、テレビ、雑誌等のメディアで活動中。さまざまな病気の概説や、医療に関する種々の問題に取り組む。

2009年6月7日日曜日

メディアに求めるもの

 新型インフルエンザに対するメディア報道がパタッと姿を見せなくなってきました。累積患者数は増加しつつあるものの、幸いなことにほぼすべてが完治しつつあり、ひと安心の表れなのかとも思います。しかしながら、水際対策をはじめとする厚生労働省の一生懸命な努力によって、このようなよい結果をもらたしたのかどうか、疑問をもつ医師らも増えています。先日の国会でも、現職の厚生労働医系技官で医師の木村盛世氏 http://www.kimuramoriyo.com/  が、厚生労働大臣の目の前で、今回の水際対策を強く批判をしていたことには、とても勇気ある姿勢だと感じました。ただ、国会の場で、エビデンス、科学的論拠に基づいた対策とか、専門的な議論にまでは発展されず、十分に木村氏の発言の真意が伝わらなかったことは医療に従事する者として残念でした。なんとなく「現場は大変」という感じのみでとらえられてしまったようにも思いました(私の公式HPの動画、番組「ちちんぷいぷい」を参考に)。彼女は、米国ジョンズ・ホプキンス大学公衆衛生大学院疫学部修士課程修了(MPH[公衆衛生学修士号])。優れた研究者に贈られる、ジョンズ・ホプキンス大学デルタオメガスカラーシップを受賞した感染症学でのトップレベルの人材です。まだまだ議論は絶えませんが、これからの問題は、冬になって、従来の季節性インフルエンザと、新型インフルエンザの両者の患者は激増することは間違いありませんので、その際、対応に関して区別はできないのではないかと思う次第です。今からこのような議論をメディアが率先して追及していくべきではとも感じます。

 また、今回の新型インフルエンザの大報道に合わせて思うことがあります。一年ほど前に、私が「産科医が消える前に(朝日新聞出版)」を出版したころは、盛んに産科医療崩壊、産むところがない、そしてさらには、救急医療の崩壊、医療全体の崩壊、、、と盛んにメディアも取り上げて、ほぼすべての番組が特別番組を組んだり、ニュース等で特集を組んでいました。厚生労働省も全力で改善すると宣言していましたが、医療の現場は、そのころとほとんど変わっておりません。現在は、そのような報道も姿を消し、何事もないように静まりかえっています。一年前に執筆した私の本を、今、読みなおしてみても、書きなおすところはないほど、何も動いていない、というのが現場の声です。厚生労働省の仕事の幅が多すぎ、分割案なんかも出されていますが、手段はどうにせよ、とにかく、改革を進めてもらいたいというのが現場の声であり、メディアが率先して継続的に報道していただきたいと、お願いしたい所存です。