ようこそ医療ジャーナリスト・医学博士、森田豊の公式ブログへ。

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1963年東京都生まれ。88年秋田大学医学部卒業。95年東京大学大学院医学系研究科卒業。96年東京大学医学部附属病院助手を務め、97年ハーバード大学医学部専任講師。2000年埼玉県立がんセンター医長。04年板橋中央総合病院部長。現在は、現役医師、医療ジャーナリストとして、テレビ、雑誌等のメディアで活動中。さまざまな病気の概説や、医療に関する種々の問題に取り組む。

2013年1月4日金曜日

ラジオ人間ドック、笑う門には福来たる、ニッポン放送

今週の、ニッポン放送、高嶋ひでたけのあさラジ!ラジオ人間ドックでは、笑うことのメリットデメリットについて解説しました。アメリカでは、「笑い療法学会」が発足し、大阪府では、「笑いと健康推進事業」が進められています。笑うことによって生じるカラダへのメリットは、第一に免疫力が高まることです。笑うことで、NK細胞という免疫細胞が活性化され、感染症のみならず、ガンに対して効果があることも示唆されつつあります。第二に、笑いがもたらすリラックス効果によって自律神経の働きが安定します。自律神経の働きが安定すれば、内臓の働きも正常化します。通常、笑うことによって、副交感神経が優位になりますが、それによりストレスが解消されるのです。第三に、笑うことで、痛みを抑える効果のあるエンドルフィンが増加し、痛みを忘れさせてくれる作用もあるのです。さらに、最近では、笑って脳を刺激することで、脳血流が豊富になって、脳障害・痴呆症の予防効果も得られています。
 ところが、笑いとカラダにまつわる話として、笑い死にという言葉もあります。すなわち、笑うことが原因となって命を落とすというものです。その最初の事例は、古代ギリシャの記録に残されています。紀元前3世紀の古代ギリシャの哲学者クリッシュボスは、ロバに葡萄酒を与えた後、その酔ったロバがイチジクの実を食べようとしている様子を見て、笑い死にしてしまったと伝えられています。さらに、最近の報告で例をあげれば1975年、英国のミッチェル氏は、テレビ番組を見ていて、笑いすぎて(25分間)心不全で死亡しました。また、1989年、デンマークのベンチェン氏は、コメディー映画を見ていて、笑いすぎて心停止を起こしましたが、死亡前の心拍数は、250~500回/分だったとのことです。以上のことから、笑うことも、ほどほどにした方が良さそうです。自発的な笑いとは別に、中世のヨーロッパでは、強制的に笑わせることを拷問刑として用いていたようです。抵抗できないように手足を縛り、笑わせて窒息するまでくすぐるというものです。いわゆる強制的に笑い死にさせるというものです。
 適度な笑いは、カラダにとって多大なメリットをもたらしてくれることは確かですが、笑いとカラダについて調べてみると、かなり奥深い歴史があることがわかります。