ようこそ医療ジャーナリスト・医学博士、森田豊の公式ブログへ。

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1963年東京都生まれ。88年秋田大学医学部卒業。95年東京大学大学院医学系研究科卒業。96年東京大学医学部附属病院助手を務め、97年ハーバード大学医学部専任講師。2000年埼玉県立がんセンター医長。04年板橋中央総合病院部長。現在は、現役医師、医療ジャーナリストとして、テレビ、雑誌等のメディアで活動中。さまざまな病気の概説や、医療に関する種々の問題に取り組む。

2011年12月12日月曜日

NHK総合テレビジョン、あさイチ、TPP加盟と医療

本朝のNHK総合テレビジョン、あさイチ、にて、TPP加盟と医療について下記のコメントの一部が放送されました。
 TPP加盟によって、国民皆保険制度の崩壊の恐れがあるという反対意見が、日本医師会を中心に出てきています。国民皆保険制度が完全に崩壊することはないにしても、日本医師会の判断は、ある程度、理にかなったものだと私は思います。TPP加盟によって、営利目的の病院が参入し、自由診療は確実に増えることが予想されますが、政府の財政赤字(医療費赤字)を考慮に入れれば、結果的に、公的保険が適応される範囲が徐々に少なくなることが危惧されるのです。すなわち、先進医療も公的保険が適応される動きが止まり、全額自己負担、高額の医療費を払える人しか受けられなくなる可能性が高くなるでしょう。薬に関しても、国内未承認の薬を個人輸入という形で国内に導入する動きが加速化し、自由診療で使用することがTPP加盟によって進むと考えます。
 野田総理の国会答弁では、「公的保険制度は断固として守る」ということでしたが、国も医療費高騰による財政赤字をどうにかこうにかしたいと思っている以上、保険診療の適応範囲を拡大する方向に歯止めがかかる可能性の方が高いと考えます。日本の政権の信頼性が損なわれつつある以上、「公的保険制度は断固として守る」という言葉だけでは、信用できないように思います。
 最悪のシナリオを考えるとすると、将来的に、富裕層だけが、よい医療を受けることができ、富裕層の寿命だけが延びるという、極めて恐ろしい可能性もでてくるように思います。これが、国民皆保険が維持できなくなる可能性です。また、混合診療が全面解禁された場合には、薬や医療機器のメーカーは最新の機材や薬を開発する際に、時間や費用のかかる保険認可を待たず、自由診療に提供するようになる可能性もあります。これもまた、医療格差を加速させてしまうのではないでしょうか。