ようこそ医療ジャーナリスト・医学博士、森田豊の公式ブログへ。

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1963年東京都生まれ。88年秋田大学医学部卒業。95年東京大学大学院医学系研究科卒業。96年東京大学医学部附属病院助手を務め、97年ハーバード大学医学部専任講師。2000年埼玉県立がんセンター医長。04年板橋中央総合病院部長。現在は、現役医師、医療ジャーナリストとして、テレビ、雑誌等のメディアで活動中。さまざまな病気の概説や、医療に関する種々の問題に取り組む。

2009年8月8日土曜日

妊婦の新型インフルエンザ、抗インフルエンザ薬の使用

 妊婦の新型インフルエンザ感染に関して、日本産科婦人科学会は8月7日までに、「妊婦もしくは褥婦に対しての新型インフルエンザ(H1N1)感染に対する対応Q&A」を改訂しましたhttp://www.jsog.or.jp/ 。この中で、「妊婦は重症化しやすいことが明らかになりました」と注意喚起し、タミフルなどの抗インフルエンザ薬の状況に応じた早期服用や予防的服用を勧めるよう医療関係者に求めています。妊婦がインフルエンザ様症状(38度以上の発熱と急性呼吸器症状)を訴えた場合の対応について、「産婦人科への直接受診は避けさせ、地域の一般病院へあらかじめ電話をしての早期受診を勧める」としています。これは、妊婦から妊婦への感染を防止するため、重要なことと考えます。
 タミフルなどの投薬は、妊婦の重症化防止に効果があるとしながらも、抗インフルエンザ薬の胎児への影響については、「抗インフルエンザ薬を投与された妊婦および出生した児に有害事象の報告はない」との2007年の米国疾病予防局ガイドラインの記載を紹介した上で、服用による利益が「可能性のある薬剤副作用より大きいと考えられている」としています。医療現場では、「可能性のある薬剤副作用より大きい」かどうか、という判断はなかなか難しいのが現状でしょう。
 また、妊婦にかかわらず、患者と密に接した人たちへの抗インフルエンザ薬への予防的投与についてはまだ議論があります。無論、客観的にリスクの高い人への投与は重要でしょうが、皆が過剰に心配して、我が国だけが、多量の薬を消費してしまうことを危惧します。