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1963年東京都生まれ。88年秋田大学医学部卒業。95年東京大学大学院医学系研究科卒業。96年東京大学医学部附属病院助手を務め、97年ハーバード大学医学部専任講師。2000年埼玉県立がんセンター医長。04年板橋中央総合病院部長。現在は、現役医師、医療ジャーナリストとして、テレビ、雑誌等のメディアで活動中。さまざまな病気の概説や、医療に関する種々の問題に取り組む。

2010年5月12日水曜日

ベイエフエムで、子宮頸がんワクチンについて解説

5月12日、bayfm「POWER BAY MORNING」で、子宮頸がんワクチンについて解説しました。
昨年末から、日本国内で発売になった子宮頸がん予防ワクチンについてです。
子宮頸がんは婦人科領域のがんの中で乳がんについで発症頻度が高く、とくに20~30代での発症が急増しています。
●このワクチン接種による予防効果について?
ワクチンを接種したからといって、すべての方の子宮頸がんを予防できるというわけではありません。約6~7割を予防できると報告されています。ただし、効果が、6~7割という値は決して悪い値ではありません。ワクチンでがんを予防できるということは、最近の医学における大きな進歩、躍進なんですね。そんなわけで、ワクチン接種をされた方も、その後の定期的な子宮がん検診はかかせませんね。欧米では、検診率は70%以上なのに、日本の検診受診率は21%と極めて低いわけで、ワクチンも大事なのですが、この機会に子宮癌検診の重要性も強調したいですね。
●いつごろ、何回ぐらい投与するのでしょう?費用は?
子宮頸がんは、性交渉によるパピローマウィルスというウィルスの感染で生じることがわかっています。このウィルスに対するワクチンの投与は、性交渉を経験する前に投与しておくことが望ましいとされています。ただし、性交渉の経験がある方でも、このウィルスに感染していない方もいらっしゃいますので、効果がないということではありません。実際には、初回と、1ヶ月後、6ヶ月後の3回の接種が必要で、3回でおおよそ5~6万円かかります。
●かなり高額ですが、公費の補助に関して、現在どのような動きがあるのでしょうか?
30以上の自治体市町村で、公費負担をするところがでてきています。しかし、住んでいる場所によって、公費になったり、自分でお金を払わなければならなかったり、地域による医療格差が生じるのは問題ですね。早急に、国による公費補助のシステムを確立してもらいたいです。欧米などでは、12,3歳女子の全額公費負担というところが多いです。
●12、3歳の子供にワクチンの重要性を説明する際に、性教育が必要となり、若年齢での性教育について慎重論もあるようですが?
若年齢者に対する性教育については、アメリカの一部の地域で、「性行為にお墨付きを与えることになるのでは」と危惧されたこともありました。しかし国内の現状としては、若年者の性交渉の体験率は急激に上昇していますので、ワクチン投与は、それよりも前、すなわち、12,3歳(小6、中1)というのが妥当だと思います。性交渉の体験率ですが、国内の報告では、中学1,2年生で数%、中3で10%、高校になると、25~45%にもおよびます。
日本では、家庭での「性」についての話はタブー視されてきましたが、今回、子宮頸がんワクチン接種ということをきっかけに、性の問題についても真剣に話し合うよい機会になればとも思います。