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1963年東京都生まれ。88年秋田大学医学部卒業。95年東京大学大学院医学系研究科卒業。96年東京大学医学部附属病院助手を務め、97年ハーバード大学医学部専任講師。2000年埼玉県立がんセンター医長。04年板橋中央総合病院部長。現在は、現役医師、医療ジャーナリストとして、テレビ、雑誌等のメディアで活動中。さまざまな病気の概説や、医療に関する種々の問題に取り組む。

2009年5月19日火曜日

エビデンスに基づいた対策を

医療においては、Evidence-based medicine (EBM)といって、科学的根拠に基づいて診療方法を選択決定することが重要です。すなわち、今回の新型インフルエンザの対策に対しても、ある対策をとった場合と、とらなかった場合で、有意な差をもって、感染防御に役立つかどうかという科学的根拠に基づき対策方針がとられるべきです。今回の日本の水際対策のように、国をあげてがんばって、一人も侵入しないように努力する(厚生労働大臣の口癖のようです)という、エビデンスのない努力は、残念ながら、方向性が間違っているようで、経費や時間の無駄になります。そして人権侵害にまで発展するという意見まで出ています。たとえば、現在、マスクが売り切れになっている国内の事情。本当にマスクがどこまで重要なのでしょうか?WHOからの論文にエビデンスガ書かれてあります。新型インフルエンザを発症した人がマスクをつけること、発症した人の1m以内に近づく場合に、マスクを適切に使用すること、これらは効果(エビデンス))はあるようですが、いわゆる、街中を歩いている人が、マスクをつけていることにはエビデンスはないようです。アメリカから成田に着いたアメリカ人も、機内で1時間も待たされたあげく、マスクが全員に配布され、びっくりしたようで、「このマスクが税金で買われていることに、日本人は怒らないのか?」と、感想を言ったようです。その他、国内でエビデンスがないとしてもやられていることとしては、患者の出ていない学校の閉鎖、集会の自粛や中止、機内検閲、患者と接触した可能性のある人の隔離、渡航自粛などがあげられるでしょう。一生懸命にやろうとする国の気持ちはわかりますが、まさしく科学的ではく、政治家のエビデンスに基づいた医療対策ではないでしょうか?水際対策が感染拡大を防ぐことは、ほとんどないか、まったくないわけです(SARSでも同様)。200人近い感染者を出した日本でも、水際で食い止めた人はたった4人だったわけですね。

(参考のサイト)
●マスクに関するエビデンスhttp://www.who.int/csr/resources/publications/swineflu/masks_community/en/index.html
●渡航自粛、水際対策を推奨しないとするエビデンスhttp://www.who.int/csr/disease/swineflu/frequently_asked_questions/travel/en/index.html
●木村盛世オフィシャルWEBサイト
http://www.kimuramoriyo.com/